ハワイの食業界をつなぐ注目イベントが、ダイヤモンドヘッド近くのカピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)で開催されました。日本の食品メーカー10社の食材を使い、KCCの学生シェフ15名が創作ランチ5コースを調理。さらに、ハワイの有名シェフや業界関係者を招き、試食と商談、交流を行うという内容です。若手育成と日本産食材の可能性を広げることを目的とした、日ハ食文化交流の現場をレポートします。

※掲載している情報は2026年2月13日現在のものです。
ハワイの食業界をつなぐ注目イベントが、ダイヤモンドヘッド近くのカピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)で開催されました。日本の食品メーカー10社の食材を使い、KCCの学生シェフ15名が創作ランチ5コースを調理。さらに、ハワイの有名シェフや業界関係者を招き、試食と商談、交流を行うという内容です。若手育成と日本産食材の可能性を広げることを目的とした、日ハ食文化交流の現場をレポートします。

※掲載している情報は2026年2月13日現在のものです。
今回の試食会・商談会の会場となったのは、ダイヤモンドヘッド近くに位置するカピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)のOHIA ROOM(オヒア ルーム)。調理設備を備えた会場には、ハワイの有名シェフ15名が集結しました。

ハワイを代表するトップシェフの一人であるRoy Yamaguchi氏(写真下1枚目)をはじめ、有名&人気レストランのシェフが顔を揃え、日本から来た食品メーカー10社、そしてこのプロジェクトを支援するJETRO関係者も参加。
<参加日本企業10社>
・株式会社 NOAN(有機抹茶シロップ)
・有限会社 生活アートクラブ(するめいか一夜干し100g(1枚)、無添加辛子明太子500gバラコ)
・株式会社 宇和島プロジェクト(みかんブリフィーレ、みかん鯛フィーレ)
・株式会社 ヴォークス・トレーディング(こめ油)
・株式会社 小田原屋(食べるオリーブオイル オリジナル)
・株式会社 沖縄ジンジャーシロップ(石垣島のにごり黒糖ジンジャーシロップ)
・株式会社 柚子屋本店(萩の塩、柚子マーマレード)
・西福製茶 株式会社(八女抹茶、八女玉露 福のつゆ)
・株式会社 CITRUS JAPAN(レモンシロップ300ml、ゆずピール)
・イノベックストレードジャパン 株式会社(インペリアルスモークサーモン フィレ/スライス)
この日振る舞われたのは、日本の食品メーカー10社の食材を使い、KCCの学生シェフ15名が創作した5コースランチ。料理人の卵たちが、日本産食材の魅力をどのように表現するのか楽しみな一方で、学生達にとって、このイベントは大きな学びの場でもあります。自分たちが考案したメニューを一流のシェフ達に食べてもらうという貴重な機会は、学生達の大きなモチベーションとなり、そこで得られた経験や手応えは実習や座学でも得られない生徒達の自信となっていくでしょう。こうしたリアルなイベントを通して、これまでにない教育・指導の機会を作る、という社会貢献的な側面もこのイベントの魅力の一つと言えます。
トップシェフたちが続々と会場入りする中、試食ルームには緊張感と期待感が混ざったような独特の空気が広がっていました。

タオルミーナの三村シェフ(右)、ファイヤーグリル・ワイキキの浜口シェフも会場に姿を見せていました。
では早速、気になる本日のメニューをご紹介しましょう。

今回の試食会は、スモールバイツからデザートまでの5コース構成。
◆スモールバイツ
・はらこ飯 :だし香るご飯とインペリアルスモークサーモン、レンコン、胡麻、チャイブ。 有明海苔のクリスプ天ぷらの上のイクラを添えて(写真1枚目)
・玉露シューターと有明海苔団子(写真2枚目)
・北海道産帆立の冷製 だしのポシェ、旨味だしのジュレ、味付け玉露葉、柚子の皮(写真3枚目)
◆アペタイザー
・稲庭うどんとスルメイカ ガーリックだし醤油バターソース、エリンギ、ガーリッククランチオイル 明太バター食パンを添えて
◆魚料理
・魚のテリーヌ・ド・ポワゾン〈ぶり大根〉 みかんぶり・みかん鯛の昆布締め 大根と旬野菜とともに

◆メインディッシュ(肉料理)
・和州牛テンダーロインのソテー 石垣島・黒糖(クラウディ)ジンジャーシロップで艶焼きに
有機・原木しいたけのアニス香るジュレ、わらびとトマトサルサ、トリュフ香るドフィーヌポテト、 すみだファームのクレソンの米ぬか油天ぷらを添えて。 八女抹茶と萩塩で仕上げ

◆デザート
・ライスプディング、パンナコッタ(西福製茶・八女玉露「福の露」インフューズ)、炒り米アイスクリーム、石垣島・黒糖(クラウディ)シロップに漬けたマスカット
・コンフェクション(小菓子)
西福製茶の八女抹茶、柚子屋本店の柚子マーマレード、柚子ピールの砂糖漬け

◆ドリンク
・抹茶レモン・リフレッシャー、ノアンの有機抹茶コンセントレート、日南レモンコンセントレート
・八女玉露のコールドブリュー
このイベントの大きな特徴は、「その場でメーカー(製造者)とシェフ(作り手)が直接対話ができること」。

6名着席のテーブルに、メーカーとシェフが同席するスタイルがとられ、料理を味わいながら食材の背景や加工方法、保存性、供給体制について直接対話する姿が印象的でした。

単なる試食会ではなく、実際のビジネスにつながるリアルな交流の場となっていました。 料理を媒介にしながら、食材の可能性を探る…、そんな実践的なやり取りが随所で見られたのが、このイベントの大きな意義となったのではないでしょうか。

5コースのサーブがすべて終わり、学生シェフ達も試食ルームに登場。会場からも大きな拍手が送られ、彼らの表情にも達成感や安堵感がうかがえました。これからの学生生活、そして今後プロとして食の道を探求する上でも、今日の経験は大きな自信になったはず。彼らの未来とハワイのフードシーンにも熱いエールを送りたいですね!
今回のイベントは、試食会という側面だけでなく、日本産食材をハワイに広めたいという目的から実施されたものでした。
このプロジェクトを支援するJETROロサンゼルス事務所 次長の和波拓郎氏(写真下)は、ハワイ市場についてこう語ります。

「日本の食材は品質が高い。ただ、“良いものを作れば売れる”という時代ではなくなっています。今は、どうやって現地のシェフの元に届けるか、そこが一番の課題です」。
実は、日本企業がアメリカ市場に進出する際、多くの人がFDA(米国食品医薬品局)の規制を心配します。しかし和波氏によると、最後に立ちはだかるのは“ラストワンマイル”と呼ばれる物流の問題だといいます。
「シェフが“これを使いたい”と言ってくれても、届ける流通網がなければ広がりません。既存の卸業者はすでに多くの商品を扱っていて、新しい商材を広げる余力が限られているのが現実です」

つまり、需要があっても、届ける仕組みがなければ定着しない。 その“隙間”をどう埋めるかが、今回のイベントの重要なテーマでもありました。
さらに和波氏は、ハワイ市場の可能性についても前向きに語ります。
「柚子や抹茶は、すでにブームを超えて市民権を得ている食材。“Japan Authentic”というブランドは、ハワイでは強い力を持っています」
また、今回の試食会で登場した「みかんブリ」のように、ストーリーを持つ食材は、ハワイのシェフにとっても魅力的な存在となる可能性があるのだそう。

「単に“日本の魚”というよりも、どんな背景があり、なぜ美味しいのか。その物語があることで、料理はより価値を持ちますし、消費者にも響きやすいメニューの開発が可能となります」
一方、この取り組みを現場で仕掛けたJTBハワイの佐藤マネージャーは、今回あえてKCCの学生にフォーカスした理由をこう説明します。
「プロになってから営業するのでは遅いんです。学生のうちに“日本産食材っていいな”と感じてもらうことが大切だと思いました」 。

ハワイのフード業界は成熟しており、既存のディストリビューターはほぼ飽和状態。新しい食材が入り込む余地は簡単には生まれません。 だからこそ、“未来のシェフ”に種をまく。
学生たちが将来メニューを考える立場になったとき、自然と日本産食材を選んでくれる土壌を育てる。こうした狙いを持って、「学生が作ったコース料理をハワイのトップシェフが試食する」というユニークな取り組みが実現したのです。今回のトライアルが、短期的な売上ではなく、長期的な市場づくりへと繋がれば、”ラストワンマイル”など、流通面の課題もクリアしやすくなるのかもしれません。
試食会終了後は、CIP校舎へ移動し、メーカーとシェフによる商談会が実施されました。

料理で終わらせず、ビジネスへとつなげる構成もこのプロジェクトの強み。 食材の魅力を「体験」し、その場で「対話」し、そして「商談」へ。 点ではなく線でつながる設計は、日本とハワイの食文化を持続的に結ぶための現実的なアプローチと言えるでしょう。

佐藤さんは最後にこう話します。 「ハワイは日本文化への親和性が高く、まだまだ可能性があります。メーカーとシェフ、そして学生をつなぐ場を、これからも作っていきたいと思っています」
今回のKCCでの取り組みは、学生育成、国際交流、ビジネス促進という三つの軸を兼ね備えた意義深いイベントでした。
学生・シェフ・メーカーが交流するスタイルを通して、ハワイのフードマーケティングをどんどん面白くしていこうという今回のプロジェクト。今後も、さらに素敵な取り組みが行われることを期待したいですね!